前回のブログ更新は8月ですから1ヶ月以上を経ての更新。最近は委員会でも「ブログをもっと更新しましょう」という言葉が機械的に出てくることすらなくなりましたね。皆さん、覚えていますか。会長が「会長のコンテンツ日記」というタグでこのブログを更新していたことを・・・。
さて、そうこうしているうちに季節はめぐって猛暑から一気に秋へとかわりました。その間に色々とコンテンツ関係の著書などが出版され、こちらの業界も盛んになってきたなという感慨があります。少し目に付いたものを書いてみましょう。決して委員会のたびに「最近、何か出てましたよね。書評どうします?」「何かありましたよね」「あー、最近出たあれ。あれですよ」みたいな言葉が交わされるから、その対策とかそういうことはないです。ありません。
一つ大きな進展であったと考えられるのはこの『デジタルゲームの教科書』(デジタルゲームの教科書制作委員会著、ソフトバンククリエイティブ)でしょう。これまで日本シミュレーション&ゲーミング学会(http://www.jasag.org/)、ゲーム学会(http://www.gameamusementsociety.org/)、日本デジタルゲーム学会(http://www.digrajapan.org/)とそれぞれの学会活動の中で盛り上がってきたゲーム学ですが、そのハンドブック的なものがついに発刊となりました。海外では『Handbook of Computer Game Studies』(http://mitpress.mit.edu/catalog/item/default.asp?ttype=2&tid=10331&mode=toc)が2005年に発刊され、一つの到達点として数え上げられますが、本書もその流れの中に位置づけられるかもしれません。何よりゲーム学としての指針のみならず、ゲーム教育にも大きな影響を与えることになるでしょう。
なおこちらのページにて本書の紹介、参考文献リストや定期的に開催されているustの案内が見られます。
続けて山中智省さんの『ライトノベルよ、どこへいく―一九八〇年代からゼロ年代まで』(青弓社)。昨年開催されました本学会第2回例会で発表していただきました山中さんの著作になります。ライトノベルとは何かという問題に真摯に立ち向かい、解き明かしていった山中さんの修士論文を書籍化したものになる・・・のですよね?個人的には80年代以前の前史(と捉えるのかどうか)といったところから語っていただきたかったのですが、それは個人的な興味関心です。
そしてその第2回例会つながりで『闇のファンタジー』(青弓社)。一連のナイトメア叢書の1冊になります。といいますか青弓社が続きますね。こちらには昨年の第2回例会でご発表いただきました井上乃武さんの「「語り」の問題性とその向こう側にあるもの――天沢退二郎における二元論の問題」、大島丈志さんの「呪術的世界に生きた「毒もみのすきな署長さん」に関する考察――毒もみを中心とした宮沢賢治作品における罪のあり方をめぐって」という2本の論文が収録されております。個人的に秀逸だったのは表智之さんの「闇はすぐそこにある――諸星大二郎をめぐって」。鳥山石燕らの活動を「妖怪革命」とする香川雅信氏の研究を踏まえて、諸星作品を「妖怪反革命」と位置付けています。実証等の必要性はあるにせよ、かなり興味深い指摘だと思います。そのほか、コンテンツに直接関係してくるものでは、小松史生子「『キノの旅』と『ブギーポップは笑わない』」、大橋崇行「グロテスクな魔女の幻想――『うみねこのなく頃に』」なども収録されております。
また、現在編集中の本学会学会誌4号では前述の山中さん、井上さん、大島さんに論考を依頼し、特集を組むことになっております。ぜひお待ちください。ラノベ好きは必読です。