コンテンツ文化史学会2014年大会「コンテンツと歴史認識」発表者募集のお知らせ

コンテンツ文化史学会では来る11月22日(土)・23日(日)に2014年大会「コンテンツと歴史認識」を開催いたします。テーマ論題だけではなく、自由論題発表の募集をお待ちしております。

○趣旨説明

コンテンツ文化史学会では、2012年度大会で「コンテンツと記憶」、2013年度第一回例会で「コンテンツと歴史」をテーマとし、コンテンツの持つ歴史性について検討を重ねてきた。2014年度大会では従来の研究を批判的に継承し、「コンテンツと歴史認識」をテーマとして、さらなる議論の深化をはかりたい。
現在、国家間の歴史認識の齟齬は世界各国で問題化している。日本・中国・韓国の東アジア三国をめぐる歴史認識問題のみならず、パレスチナとイスラエル、ロシアとウクライナ・バルト三国など、世界の至る所で歴史認識に端を発する国際問題が引き起こされている。このように、きわめて現代的な問題であるにも関わらず、しかし、かかる現状に対し、歴史認識の問題について最も責任を負うべき歴史学者の努力は実を結んでいるとは言い難い。
その一因として、現代社会において研究者によって明らかにされた歴史像が、人々の歴史認識にどのようにして影響を与えているのか、という観点に十分な注意が払われていないことを挙げることができよう。歴史研究の成果は、書籍・テレビ・ネットなどのコンテンツを通じることで、人々の中に受容されていく。そのため、実証的、理論的な人文科学研究の成果と、人々の間で理解されている「歴史認識」との間には大きな断絶がある。
今大会のテーマである「コンテンツと歴史認識」においては、従来の研究では看過されがちであった、このコンテンツの持つ、科学的、実証的研究と、人々の持つイメージとを橋渡しする機能に注目し、人々の歴史認識に影響を与えている「コンテンツ」の実態とその影響力について検討を加えたい。
この問題を検討することは、単に文化史の問題を明らかにするにとどまらず、現在の国際的環境の改善への糸口を示す一助ともなりうることが期待できよう。大会参加者の積極的な議論を期待したい。

【概要】

○大会テーマ

コンテンツと歴史認識

○開催日

2014年11月22日(土)23日(日)

○場所

東海大学高輪キャンパス4号館4304教室
http://www.u-tokai.ac.jp/about/campus/takanawa/

○研究発表の種類と時間

・研究発表は以下の2種類があります。両方ともに口頭発表になります。

  1. テーマ発表
  2. 自由論題発表

・テーマ発表は大会テーマ「コンテンツと歴史認識」に関連する発表になります。
・自由論題発表は大会テーマ以外でコンテンツ文化史に関連する研究発表になります。
・発表時間は2種類とも質疑応答を含めて30分といたします。
・発表申込は1人につき1種類、1報告のみです。
・なお自由論題において大会テーマとは別のテーマ立てによる企画セッションとしての申込も可能です。一つのセッションの司会者・発表者をまとめた上で代表者が応募してください。

○発表申込方法

・発表申込は本学会会員に限ります。連名で申し込む場合は第一発表者が会員である必要があります。
・報告を希望される方は、所属機関・氏名・報告論題・発表原稿(2000字以上)を2014年9月30日必着でウェブサイトの投稿フォームよりお送りください。
※投稿フォーム: http://www.contentshistory.org/journal/contribution_form/
・採否は、10月初旬にご連絡いたします。
・なお投稿される発表原稿は本学会の執筆要綱に準拠いたします。執筆要綱を守られていない場合は受け付けないのでご注意ください。
・採択された原稿は、当日配布の予稿集に掲載いたします。
・学会誌『コンテンツ文化史研究』では、大会特集コーナーを組み、大会で発表された論文の投稿を受け付ける予定です。

○2014年コンテンツ文化史学会大会実行委員会

実行委員長:柳原伸洋(東海大学)
顧問:出口弘(東京工業大学)
委員:飯田幸次郎(デザイナー)
委員:板垣貴幸(IGDA日本)
委員:井上明人(立命館大学)
委員:大橋正司(デザイナー)
委員:岡本健(奈良県立大学)
委員:樺島榮一郎(相模女子大学)
委員:こさささこ(クリエーター)
委員:小山友介(芝浦工業大学)
委員:佐藤寿昭(東京大学大学院学際情報学府博士後期課程)
委員:高橋勝輝(編集屋)
委員:玉井建也(東北芸術工科大学)
委員:中川譲(日本映画大学)
委員:中村晋吾(早稲田大学高等学院非常勤講師)
委員:七邊信重(一般財団法人マルチメディア振興センター)
委員:藤原正仁(専修大学)
委員:堀内淳一(皇學館大學)
委員:山口晶子(上智大学大学院)
委員:山中智省(滋賀文教短期大学)
委員:吉田正高(東北芸術工科大学)

○共催

2014年度学習院大学東洋文化研究所一般研究プロジェクトA14-2「東アジア各国における歴史認識とコンテンツ」

コミックマーケット86参加のお知らせ

下記の要領でコミックマーケット86に参加いたします。お近くに御寄りの際は足をお運びください。

【日  時】 2014年8月17日(日)
【場  所】 東京ビッグサイト
【サークル名】 コンテンツ文化史学会
【配  置】 東地区 P-15b
【頒 布 物】 『コンテンツ文化史研究』2・3・4・5・6・7・8号、2012・2013年大会予稿集
【価  格】 『コンテンツ文化史研究』各2000円(一部値下げ!)、予稿集500円

コンテンツ文化史学会2014年第1回例会「アイドルの現在-リアルからバーチャルまで-」のお知らせ(参加登録開始)

コンテンツ文化史学会では、来る7月19日(土)に2014年第1回例会「アイドルの現在-リアルからバーチャルまで-」を開催いたします。参加ご希望の方はお手数ですが参加申込フォームよりお申込みください。なお、SF大会参加者の方はこちらの事前登録は必要ありません。会員・非会員(SF大会参加者ではない方)のみ事前参加登録をお願いいたします。

コンテンツ文化史学会2014年第1回例会(日本SF大会内企画)「アイドルの現在-リアルからバーチャルまで-」

日時:

2014年7月19日(土)12時半開場、13時開始

場所:

つくば国際会議場中ホール200

参加費:

500円(会員およびSF大会参加者は無料)

参加申込ページ

http://www.contentshistory.org/event_entry/
SF大会参加者の方は本サイトにて事前登録をする必要はありません。ただし、本学会の懇親会への参加を希望される場合は人数確認もありますので、事前参加登録をお願いします。

会場の都合により参加人数が限られます。多数のご参加申込の場合は打ち切らせていただく可能性がございます。こまめに学会ウェブサイトをご確認くださいますよう、お願い申し上げます。

なお終了後に秋葉原にて懇親会開催を予定しております。こちらもあわせてご参加ください。ただし、懇親会への参加は会員の方のみとさせていただきます。

司会:

堀内淳一 (皇學館大學)

登壇者:

井手口彰典(立教大学社会学部准教授)「コントローラブル・アイドル : 初音ミクにとっての2010年代」
香月孝史(ライター/東京大学大学院学際情報学府博士後期課程単位取得退学)「パーソナリティがコンテンツになるということ――ジャンルとしての「アイドル」を特徴づけるもの」
山本寛(アニメーション監督・演出)「アイドルとアイドルアニメ~近くて遠い二次元と三次元」

タイムスケジュール

13:00-13:10 趣旨説明
13:10-13:50 第一報告(井手口)
13:50-14:20 討論
(休憩)
14:30-15:10 第二報告(香月)
15:10-15:50 第三報告(山本)
(休憩)
16:00-17:00 総合討論

コンテンツ文化史学会2014年第1回例会「アイドルの現在-リアルからバーチャルまで-」のお知らせ(第一報)

下記のように2014年第1回例会「アイドルの現在-リアルからバーチャルまで-」を開催いたします。今回は日本SF大会内での開催となりますが、この例会に関しては通常通り会員・非会員の方は参加できます。また、SF大会参加者の方も参加可能です。会員・非会員(SF大会参加者ではない方々)に関しては、これまで通り事前参加登録を行います。こちらのほうはサイトができましたら、ご連絡いたします。
—-

○コンテンツ文化史学会2014年第1回例会(日本SF大会内企画)

  • テーマ「アイドルの現在-リアルからバーチャルまで-」
  • 日時:7月19日(土)
  • 場所:つくば国際会議場中ホール200
  • 時間:13時-17時
  • 登壇者:
    • 井手口彰典(立教大学社会学部准教授)
    • 香月孝史(ライター/東京大学情報学環博士後期課程単位取得退学)
    • 山本寛(アニメーション監督・演出)

「東京大学大学院情報学環角川文化振興財団 メディア・コンテンツ研究寄付講座開設記念シンポジウム」のお知らせ

東京大学大学院情報学環メディアコンテンツ研究機構様より下記のシンポジウムの連絡をいただきました。ご興味ある方はぜひご参加ください。なお、本件に関するお問い合わせは本学会ではなく、下記のURLより公式サイトを通じてお願いいたします。

—-

東京大学大学院情報学環角川文化振興財団 メディア・コンテンツ研究寄付講座開設記念シンポジウム

  • メディアミックスの歴史と未来
  • 2014年3月11日(火)13:00-17:30
  • 東京大学本郷キャンパス情報学環・福武ホール 福武ラーニングシアターにて
  • 登壇者:秦剛、佐野明子、キム・ジュニアン、大塚英志、吉見俊哉、角川歴彦、川上量生、マーク・スタインバーグほか
  • シンポジウム第一部では、アニメーション成立期に遡り、東アジア各国における初期アニメーション作品を米国アニメーションの影響という観点から比較・検証し第二部では今日のメディア産業における第一人者海外の研究者の議論を通じてメディア環境とコンテンツ流通の関係性と可能性を議論します。詳細については下記サイトをご覧いただければ幸いです。
    http://kadokawa.iii.u-tokyo.ac.jp/sympo2014spring/index.html

大会が終わり、コミケへ

皆様。2013年大会は大変お疲れさまでした。下記のtogetterにその一端がまとめられております。つぶやきですので、ほんの一部でしかありません。これで当日の話の文脈まで読めませんので、ご注意ください。

http://togetter.com/li/600056

http://togetter.com/li/600576

また、ファミ通さんにも取り上げていただきました。まことにありがとうございます。

http://www.famitsu.com/news/201312/27045576.html

それにしても会場の東海大学高輪キャンパスは綺麗でしたね。夜はイルミネーションが目立っておりました。

夜の風景を撮影しておりませんが…今回、参加できなかった方は来年にぜひお会いしましょう。例会・大会と開催したします!そして明日はコミケ3日目。コンテンツ文化史学会もサークル参加いたします。

http://www.contentshistory.org/2013/12/19/1414/

場所は西 も – 09 aです。特に新刊ありません!数時間後には起きて、出発です。参加される方はぜひお寄りください。それでは良いお年を!

コミックマーケット85参加のお知らせ

下記の要領でコミックマーケット85に参加いたします。お近くに御寄りの際は足をお運びください。

【日  時】 2013年12月31日(火)
【場  所】 東京ビッグサイト
【サークル名】 コンテンツ文化史学会
【配  置】 西地区 も – 09 a
【頒 布 物】 『コンテンツ文化史研究』2・3・4・5・6・7・8号、2012・2013年大会予稿集
【価  格】 『コンテンツ文化史研究』各2000円(一部値下げ!)、予稿集500円

「<連続シンポジウム>マンガのアルケオロジー2 マンガ研究とアーカイブ 」のお知らせ

文化庁メディア芸術コンソーシアム構築事業様より下記のシンポジウムのご連絡をいただきました。こちらのシンポジウムに関するご連絡は本学会ではなく、下記のサイトおよび主催団体にお願いいたします。

———————————————

<連続シンポジウム>マンガのアルケオロジー2 マンガ研究とアーカイブ

[日時]2014年1月26日(日)13~17時 / 開場 12時30分

(入場無料・要事前申込)

[場所]政策研究大学院大学1A会議室(東京都港区六本木7丁目22-1)

[プログラム]
<第1部>
13:00~13:05 開会の挨拶 文化庁

13:05~13:15 連続シンポジウムについて
夏目房之介 (マンガ・コラムニスト/学習院大学大学院教授)

13:15~13:55 講演「マンガ研究とアーカイブ」
清水勲 (京都国際マンガミュージアム研究顧問/日本仏学史学会会長)

14:00~15:00 プレゼンテーション「マンガ収蔵の現状・事例報告」
吉村和真(京都精華大学教授)
宮本大人(明治大学准教授)
表智之(北九州市漫画ミュージアム専門研究員)
佐々木果(まんが編集者/学習院大学大学院非常勤講師)

15:00~15:20 休憩(20分)

<第2部>
15:20~16:30 討議「マンガ・アーカイブの意義と課題」
表智之、佐々木果、宮本大人、吉村和真
16:30~17:00 質疑応答

[主催]文化庁 平成25年度メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業

http://mediag.jp/project/project/archive.html

●サイトもしくはFAXにてお申し込み下さいますようお願い申し上げます。

———————————————

キャラクター大会に向けて その5「ゆるキャラのどこが面白いんだ?」

にゃんぱすー(挨拶)

もうあと数日になりました。2013年キャラクター大会へのご参加を検討されている方はぜひ参加登録サイトから必要事項をご記入の上、送信ボタンを押してください。

さて、私は通勤途中にラジオをよく聞いてradikoやpodcastなど諸々活用しているのですが、先日の爆笑問題カーボーイを聞いていましたら、太田光が「ゆるキャラのどこが面白いのかわからない」という旨を述べていました。彼が述べていた根拠は「喋らない(テレビ的にアウト)」、「こちらが殴る等のアプローチをしなければならない(ワンパターンに陥る)」、「動けない(つまらない)」、「大きい(テレビの舞台裏は狭いから邪魔)」というものであったかと思います。

テレビ文化に生きるタレントとしての彼の意見は個人的には頷ける面もあるかと思っていますが、ゆるキャラ好きの人からすれば、彼が列挙した根拠は首肯できないものかもしれません。ともすれば、「だから良いんじゃないか」となりうるでしょう。何よりゆるキャラとされる存在は彼が欠点として挙げた点を売りにしている面があることも事実です。では、なぜ齟齬が生まれているのか。

一つには大きく文脈が違うという点があるでしょう。テレビメディアにおいて発声が出来ないゆるキャラは他の出演者が引き立て役になる必要があります。そのため共演者の労力が通常よりも大きくなり、厭われるというのは良く分かります。それに対し、ゆるキャラはご当地キャラや企業などのイメージ性を請け負って存在しているという文脈、さらにいえば物語性を内包しており、その出自がテレビ文化に溶け込むための身体性などを所持することを許さないわけです。あ、なお、ふなっしーはお笑い芸人枠です。あの妖精のせいでスギちゃんが確保していた笑っていいともの枠が一つ失われました。

スギちゃんには頑張っていただきたいわけですが(棒読み)、もう一つとして良く挙げられるのはゆるキャラが乱立しすぎるという点でしょう。数少ないゆるキャラに関する論文である平林千春「ソーシャルコンテンツによる地域活性化戦略の手法とその検証」(『東北芸術工科大学紀要』20号、2013年)では、「ソーシャルコンテンツ」を「「地域から誕生・発信され、地域活性化の媒介・ツール・シンボルとして、その地域の人々に需要・活用されているエンターテイメント性を有した精神文化の所産」(52p)と定義しています。つまりゆるキャラだけではなく、ご当地ヒーローやB級グルメなども含むことになります。この論文では、上手くいかないゆるキャラに対し「ただキャラクター化すればいいということではなく、プロモーションも含めて地域活性化戦略としてトータルにマネージメントされる必要性を垣間見せている。多くの成功したソーシャルコンテンツはそのコンテンツの質もあるが、むしろどういう浸透策を採ったかということが無視できない」(54p)と述べています。

要は作ればいいというわけではない、ということです。この点はコンテンツツーリズムにも同様に言えまして、作品の舞台になり、物語性が生まれれば、勝手に動き出す、などという甘い妄想が意外に頑迷と存在しております。せめて、井手口彰典先生の論文「萌える地域振興の行方. -「萌えおこし」の可能性とその課題について-」ぐらいは読んで考えてから、聞きに来てください、と言いたい。以上、実体験に基づく愚痴でした。井手口先生の論文はこちらでpdfにて読めますのでぜひ。

というわけで何述べたいかといいますと、初日のシンポジウムは参加者の皆さんで色々と考えましょうということです。建設的なご意見をお待ちしています。

アニメ・マンガで地域振興

n次創作観光 アニメ聖地巡礼/コンテンツツーリズム/観光社会学の可能性

キャラクター大会に向けて その4(俺ガイル!)

キャラクター大会が近づいてまいりました。今週末になります。ご参加を検討中の方はぜひともご登録をお願いいたします。参加費の値下げもいたしまして、学生さんは無料になりました。

さて、今回はキャラクターというのが一つのテーマですが、皆さんがイメージするのはどのようなものがあるでしょうか。シンポで取り上げる「ゆるキャラ」を筆頭とした地域や団体、組織のキャラクターというのも一つあるでしょう。2日目のシンポで取り上げますゲームや絵本、マンガで描かれるキャラクターというのも考えられます。

しかし、このようにメディアに表出されるキャラクターのみが着目すべき点でしょうか。今回、2日目の初回で発表していただく七邊信重さんの発表「「社会関係の拒絶」か「再帰的関係」か―コンテンツに見る「優しい関係」の出口―」では、渡航『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』などを取り上げるそうです。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。8 イラスト集付き限定特装版 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。第6巻 (初回限定版) [Blu-ray]

この作品はアニメ化・ゲーム化もされ、マンガ連載も進んでおりますので、ご存知の方も多いでしょうが、簡単にあらすじを説明しますと高校進学直後に交通事故にあい、入院していたため、友人ができないままの主人公八幡は「ぼっち」であることを指標していたが、それに対し教員により無理やり奉仕部に入部され、人付き合いの苦手な才女や友達作り(及び維持)に長けた少女、中二病全開のオタク…とデフォルメされているキャラクター群による学校生活が描かれています。個人的には『あやかしがたり』が日本史学の成果と妖怪物とを融合させた見事な作品であったために、『俺ガイル』が出てきたときは既視感満載の設定に頭を抱えたものでした。が、実力のある作家はそのような既視感も取っ払うことが出来るものだと感心したことも覚えています。「オリジナル」なんてものは既に存在しないので、この世には既視感しかないのですよ、という意見もあるかもしれません。

さておき、話をキャラクターに戻しますと、別にデフォルメされたキャラクターが魅力的だという話に帰着するわけではありません。もちろんデフォルメされているがゆえに非常にクリアに作中で描かれる情景が伝わってくるため「お前は俺か」と思う読者も多いでしょう。ちなみに私の好きなキャラは平塚先生です(さりげないフォロー)。ここで着目したいのは作中で描かれている若者たちが形成する人間関係、さらに言えばスクールカーストに関してです。

実はこのような学校制度内における若者自身のアイデンティティ形成や人間関係という問題はキャラクター研究でも非常に重視されています。2日目のシンポジウムにご登壇いただく、あいはらひろゆきさんは『キャラ化するニッポン』(相原博之名義)でも、この問題を取り上げており、若者のみならず現代において社会生活をする人々が如何に自らをキャラ化しているのかについて述べております。学校制度内に目を向けますと『キャラ化する/される子どもたち』(土井隆義)でも、過剰なほどに依存される関係性に着目をしております。さらに本学会学会誌にもご寄稿いただきました浅野智彦さんは若者全体に目を向けて、消費やコミュニケーションの問題を同時代的に取り上げて着目しています(『「若者」とは誰か: アイデンティティの30年』)。特に専門ではありませんので目についた著作をざっとめくっただけでも、学校制度内におけるスクールカーストや過剰なほど求められる人間関係、もしくはコミュニケーション不全が問題として認識される社会状況が既に存在することが理解できるのではないでしょうか。

もちろん、これは世代や個人、地域性によってかなり変化する問題だと思います。大学で教えていると学校によっては高校生までの生活を引きずっているのかスクールカーストが見事に形成されていたり、まったく気にせずにアニメの話をしている学生を見たり、と千差万別かもしれません。先日、授業で聞いたら、10代の学生があまり『俺ガイル』を読んでいない様子でしたので、驚きました…。共感しうる世代も違うのかもしれません。平塚先生、がんばってください。いや、渡航先生、がんばってください。

と、つらつらと書いてまいりましたが、七邊さんがこのような話をするかはわかりません。そもそも「自由論題」の枠組みで応募されていますし…当日をお楽しみに。

キャラ化するニッポン (講談社現代新書)

キャラ化する/される子どもたち―排除型社会における新たな人間像 (岩波ブックレット)

「若者」とは誰か: アイデンティティの30年 (河出ブックス 61)